Kumonodaira Trail Club

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雲ノ平登山道整備ボランティア・プログラムの作業風景 雲ノ平登山道整備ボランティア・プログラムの作業風景

雲ノ平登山道整備ボランティア・プログラム

雲ノ平登山道整備ボランティア・プログラムは、2021年から毎夏、雲ノ平で開催してきました。2025年度の様子は実施報告でご覧いただけます。

2026年度は新規参加者の募集を行わず、これまでに参加したメンバーとともに、整備技術の向上と現場での継続的な整備に取り組んでいます。

今後の募集については、決まり次第お知らせでご案内します。

ステートメント

雲ノ平トレイルクラブ(KTC) では山小屋とボランティア、さらに学術機関やアウトドア企業、行政機関など、山をめぐる多様な分野の関係者の協働による登山道管理の形を提案します。

なぜこのあり方が必要なのでしょうか。

今、私たちには自然環境との新しい関係性を築くことが求められています。

日本では、歴史的に公的な国立公園の管理体制(環境保全体制)が弱く、また国民が直接的に自然保護に関与する選択肢も少ない中、国立公園は(観光)利用と保護のバランスにおいて、「消費的な利用」が支配的な状況が続いてきました。
北アルプスでは、実に年間900万人もの利用者が訪れるとされており、これは世界の国立公園の中でも最大規模を誇る数値です。
そこで生じる環境負荷及び経済効果は極めて大きなものであるにもかかわらず、自然保護に割かれる行政の予算及びマンパワーは先進国中では最低レベルに留まっています。

その弱いシステムを補完する形として、民間の山小屋や山岳団体が、登山道整備や遭難救助をはじめとする多くの公益的な役割を担うことによって、国立公園の自然環境・登山インフラを維持してきましたが、近年、ゲリラ豪雨による加速度的な登山道の荒廃や、山小屋の経営環境の不安定化、人材不足、また山岳団体の高齢化などにより、従来のあり方が急速に機能しない状況になりつつあります。学術研究への投資も低迷していたことから、自然環境に関するエキスパートも不足し、強いリーダーシップを発揮して単独でこの事態を打開できる機関は事実上存在しないというのが現状です。

大きくなり続ける課題を前にして、私たちには何ができるのでしょうか。

「皆で協力し、積極的に自然に関わること。」

当たり前のことのようでいて、なかなか一般化しづらいこの考え方こそが、今求められています。
自然を守るといえば重い課題のようですが、見方を変えれば、それは自然の懐により深く入って自然との繋がりを深めることです。

先進諸国の国立公園では、管理計画の中の重要な要素としてボランティアが位置付けられており、組織的な教育プログラムが設けられ、行政機関だけではカバーできない様々な役割をボランティアが担っています。

「誰かがやること」に期待するのではなく、人と人、人と自然がより日常的に関わり合うことで、喜びをもって学び合い、理解を深め、可能性や選択肢を広げていく。一人ではできないことを助け合って可能にする「自助≒共助」の考え方を発展させる中で当事者を増やし、やがて社会全体にとって「自分ごと」にしていくという発想です。

世界の歴史を見渡してみても、アメリカの代表的なロングトレイルであるアパラチアン・トレイルは、自然歩道を作ろうというアイディアに賛同して、沿線各地のコミュニティーが次々と連携して整備が進み、それを国がナショナルトレイル法として、国立公園と同じレベルでバックアップするという制度に結びつきました。19世紀に起こったイギリスのトラスト運動も、自然保護の制度がないところから、市民らが連携して守りたい場所の土地を購入するという活動が次第に社会の大きな潮流になり、やがてそれらの土地が制度によって守られるナショナルトラスト法に結実しました。

制度というものは社会の意志として生み出されるものであり、社会の方向性を決めるのは、政治でも、一個人でもなく、人と人が関わりあう力です。人々が学びと創造の意識で世界を築いていく活動が影響力を持つほどに、自然に関わる仕事は「一部の人の趣味」でも「僻地労働」でもない、誰しもが共有するべき文化であり、価値観であり、ひいては持続性の高い経済活動にもなります。

あたりまえのことではありますが、私たち人間は自然がなくては生きていけません。
これまで日本では、山といえば「登山」のイメージが先行し、国立公園の問題も一部の人たちの「趣味」の問題として捉えられがちでした。しかし、気候変動や資源の枯渇の脅威、グローバル経済の矛盾が突きつけられる今、世界的に社会と自然環境との関係性を見直す機運はかつてなく高まっています。その自然の価値や美しさに対する感性を磨き、学びを得るための場所こそが国立公園なのです。

「ここではない、どこかに」ではなく、「ここで」何ができるのか、この場所で世界と向き合い、美しさを創造するのは、自分たち自身である、ということを共有する時期が来ていると私たちは考えます。

プログラムの運営を2022年に設立した一般社団法人「雲ノ平トレイルクラブ」で行うことにより、より多角的な視点を活かしたプログラムづくりや、公に開かれたきめ細かい情報発信あり方などを模索しつつ、実践的な産官学の協働体制を築いていきたいと考えています。
また、昨年に引き続き、プログラムの窓口を東京のアウトドアショップ、ハイカーズデポに担っていただき、アウトドア・コミュニティーとの連携をも強化していきます。

北アルプスの最奥地、雲ノ平での登山道整備活動に参加していただければ幸いです。

2024年度の活動概要

2024年のボランティア・プログラムでは、2021年に施工した祖父岳巻き道の石段における崩壊箇所の修繕と、その際に未施工だった箇所での石段づくり、さらに2023年に続いて祖父岳巻き道周辺の植生復元などを行いました。

現場ではこの4年間で技術や知見を習得したコアメンバーが、基本計画を立て、新規参加者に技術指導を行うなど、自律的な運営体制が整ってきたことが大きな進展だと感じました。

3日目の座学の時間は、現在の日本の国立公園をめぐる構造的な課題や、国際的な環境保全の歴史や地域ごとの価値観や制度の差異などを共有した上で、今後日本で展開するべき社会運動のあり方や、雲ノ平トレイルクラブ(KTC)が持続可能な形で活動するための中長期計画などについて議論しました。

コアメンバー、新規参加者、環境省スタッフやゲスト参加者、メディア、山荘スタッフなど含め、総勢30名ほどで過ごす1週間のボランティア・プログラム。さまざまなバックグラウンドを持つ参加者の多様な視点が触発し合い、新しい発見をもたらす刺激的な営みであることを再認識する期間となりました。

参加者の声

神田 啓史

神田 啓史かんだ ひろふみ

20代後半から山登りを始めました。もう少し、山と深くかかわりたくてボランティアプログラムに応募しました。約1週間のプログラム。雲ノ平周辺の環境の変化を座学だけではなく、実際の登山道の地形を意識して整備活動を行いました。いつもと違うことは、1週間、山の中で生活したことでした。1週間の間、雲ノ平に滞在すると、美しい自然現象に何度も会うことができます。その一つ一つが全て新鮮でした。そんな美しい風景を、今後も守っていくために、私自身が出来ることをしていこうと思える、貴重な経験でした。

武石 綾子

武石 綾子たけいし あやこ

初参加で緊張気味でしたが、個性的でにぎやかな先輩たちがサポートしてくれ、楽しく心に残る4日間となりました。 整備作業では体力だけでなく深い思考が必要であることも大きな学びでした。施工が景観になじむか、歩幅への配慮など、想像以上に考えるべきことが多く「歩きやすい登山道」は当たり前ではないのだと気付かされました。 自然のスケールは途方もないですが、学びを活かし自分にできることを少しずつ積み上げていきたいと考えています。