アルプス庭園の木道修繕
雲ノ平山荘を中心に、薬師沢方面、祖父岳方面など、複数のルートに分岐するように敷設された、
全長にして7kmにもなる木道。一般に10年が交換のめどと言われる中、
それらが敷設されたのは多くの箇所でもう30年以上も前のことです。明確な管理主体がいなかったために、これまでは山小屋が騙し騙し補修を繰り返して維持してきましたが、ここ数年で急速に腐朽が進み、一部区間では崩壊した箇所も見られるなど、危険な状況が散見されます。また、初期の木道は4mに設定されていたことで角度の調整がしづらく、結果的に急勾配に配置されている現状を改善する必要もありました。雨などで濡れた木道表面はとても滑りやすく、
登山者のスリップ事故が後を絶たないことも大きな問題となっています。
2022年のボランティアプログラムでは、その木道の修繕・再配置にチャレンジしました。
近年はヘリコプターによる輸送も容易にはできないため、おいそれと全面的な交換はできません。まずは事前に構造をシミュレーションし、作業者間で新たな道の形のイメージを共有。腐朽したものでも、使用できる部分のみチェンソーで切断して再利用をしたり、一部区間では、前年のプログラムで培った石積みの経験も応用し、岩などの周辺の自然物を活かす形での施工も行われました。参加者にとっては何もかもが初めての経験だったものの、小屋主や大工のボランティアスタッフを中心に作業を進めるうちに、徐々に速度や精度が向上して行きます。できあがった道は、飛躍的に歩きやすいものになりました。これは登山者のみならず、整備者の動きやすさや安全性にもつながります。このような木道の置換作業が必要な箇所は、まだ多く残されています。これからも時間かけ、優先的に取り組みたい作業です。
活動工程
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01 修繕箇所の選定
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02 古い木道の撤去
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03 完成風景の考察
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04 必要に応じて植生保護
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05 木道の調達・加工
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06 再設置
活動前後の変化
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急傾斜であった現状を改善。ステップを小刻みに入れることで勾配を緩やかにし、また表面に滑り止めの加工も行うことで、飛躍的に歩きやすい道になりました
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植生保護のためにも、登山者が道外へ足を踏み出さないような「歩きやすい」道であることが重要。整備者もその例に漏れず、まずは安定した足場を確保する必要があります
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崩壊した木道を放置することは、景観美を損なうことにもつながります。また新たに木道を引きはがし、再配置を行う際には、適宜植生復元の施工も加えていきます
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資材が不足した部分は、他エリアで廃棄されていた木道の一部を切断したものを使用するなどして対応。小分けた断片でも、木道は大変重く、運搬には人手が必要となります
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