Kumonodaira Trail Club

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祖母岳池塘修復

雲ノ平の溶岩台地上に広がる、湿性の雪田草原の風景。高山植物や池塘群が織りなすその優美な景観は、
「スイス庭園」「日本庭園」など、様々な「庭園」の名が冠されます。
祖母岳(アルプス庭園)の山頂付近にも、かつては大きな池塘が散在していましたが、木道が敷設される以前の、登山道の位置がまだ定まり切らない時代に、池塘見たさに草原に踏み入った登山者により土壌侵食が起こり、
いくつかの主要な池塘が決壊してしまっていました。
溶岩の風化や火山灰の降灰、植物の枯死した有機物がゆっくりと堆積し、数万年かけても数十センチほどしか
土壌が形成されない高山の自然景観は、とても繊細で脆いものなのです。
私たちは今回、池塘の広がる、かつての祖母岳の景観の復元を試みました。
作業の主役となったのは植生復元活動で考案された「土留めロール」と呼ばれるもの。黄麻やヤシを素材とした緑化ネットの内側に、周辺に散らばる軽石をぐるぐると巻き込むという手順で作成します。これを侵食を受けた箇所の法面に沿わせて配置することで、水を通しながらも土の流失を防ぎ、同時に保温・保湿も図ることで、植物の発芽環境を整える狙いがあります。雲ノ平山荘が15年に渡る東京農業大学との連携のもとで実践し、着実に成果をあげてきた手法です。
プログラム最終日には、前日の雨の影響もあり、かつての池塘跡に水がたたえられた光景が見られるなど、施工が十分に効果を発揮していることが驚きとともに実感。「景色をつくる」という、
登山道整備に携わる喜びを味わえたことは、今後の活動の大きな後押しとなります。

活動工程

活動前後の変化

1955年頃の祖母岳

1955年頃の祖母岳(アルプス庭園)。美しい池塘のある風景が広がっている。

活動風景ギャラリー