Kumonodaira Trail Club

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2023年度 祖父岳巻き道 植生復元

祖父岳巻き道の植生復元のメイン画像

今回の作業箇所周辺では、現在使用されている登山道に加えて、その上部に並行して走っている旧登山道でも、土壌侵食が進行している様子が確認できます。祖父岳の斜面上部から流れる水(雨水、雪融け水)が旧登山道に流れ込み、その場所で土壌を削り、溢れた水が再び草原に入り込みます。そして、下方の登山道で再び侵食を引き起こすという状況ですこのような状況を、どのようにして原因から解消できるか、考えました。

まずは旧登山道に流れ込む水を上部で分散させるための水切りを作ります。準じて必要な箇所にヤシネットの堰や土留ロールを配置し、徐々に下側に作業箇所を移していきます。現在敷かれている木道は一度傍にどかし、土壌侵食の原因から消していく作業を施します。

参加者たちが和気あいあいとしながらも自律的に作業を進める様子からは、3年間の経験が確かに実を結びつつあることを実感することができました。

作業エリアマップ

マップ上の各ピンをクリックすると、その場所の情報が表示されます。

作業前の全体マップ
作業後の全体マップ

作業前と作業後の比較

スライダーを左右に動かすと作業前と作業後の変化を比較できます。

祖父岳山頂方面・旧登山道付近

作業前の画像 作業後の画像

かつて公共事業で設置された後に崩れた丸太を撤去し、水みちを上部で分散させるため水切りを設置します。

祖父岳山頂方面・旧登山道付近

作業前の画像 作業前の画像

土壌浸食が進行している箇所には堰や土留めロールを設置。土壌への負荷を最小限に抑えます。

祖父岳巻き道付近の植生(雲ノ平山荘方面)

作業前の画像 作業後の画像

土留ロールを侵食面にしっかりと密着させることで、土壌の崩れを抑えつつ自然地形の回復と形成を図ります。

祖父岳巻き道付近の植生(黒部源流方面)

作業前の画像 作業後の画像

将来的にどのような地形になるのかを具体的にイメージしながら土留ロールを設置します。

祖父岳巻き道の木道(雲ノ平山荘方面)

作業前の画像 作業後の画像

木道の道筋を上部にずらし、傾きを水平に調整することで水流に影響を受けにくい状態に改善しました。

旧登山道から現在の登山道付近

縦長画像 作業前 縦長画像 作業後

水流を拡散、緩衝し、土砂流出による草地の埋没を防ぐために複数の堰を設置しました。

実践した施工方法の紹介

土留ロール工法

ヤシネットで転石を巻き込んだ土留ロールを侵食面に設置

土留ロール工法の概要図
  • 侵食面に密着するように設置し、土壌の崩れを受け止めて自然地形を形成する。
  • 腐ると構造が失われる丸太と違い、構造として地形を作り、生態系の基盤ができる。
  • 最終的には植生が全体を覆い、人為的な工作の形跡が残らない。
  • ヤシネット、石、土などのバランスで適切な発芽環境が得られる。
準備作業のイラスト
1

準備作業

踏圧、流水、乾燥、霜などの作用で侵食された状態

堰(せき)

ヤシネットに転石を巻き込み堰を作る

堰の概要図
  • 二次侵食を起こしやすい丸太の土留に対し、透水性と土留効果を両立させる工法として開発。
  • 自然の沢のように水勢を分散させる効果もある。
  • 腐ると構造が失われる丸太と違い、構造として地形を作り、生態系の基盤ができる。
  • 最終的には植生が全体を覆い、人為的な工作の形跡が残らない。
  • ヤシネット、石、土などのバランスで適切な発芽環境が得られる。
現場調査のイラスト
1

施工前

傾斜があり流水で侵食を受けやすい状態

活動風景ギャラリー