登山道をめぐる主要な課題
登山道をめぐる主要な課題
登山道整備における課題と現状
登山道周辺の土壌侵食や貴重な池塘の消失や、登山者の危険にもつながる木道の腐朽などの問題が進行する今、雲ノ平における生態系の保全、環境整備は、喫緊の課題です。 しかし現行の国立公園管理における制度面での障壁や、高山地帯という特殊な環境下で活動を行うことの困難さ、そして自然に対する深い理解を持ったエキスパートの不足と、そこから端を発する各方面の課題が山積する中、大きな行き詰まりを見せているのが、登山道整備の現状です。
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土壌侵食のメカニズム
寒冷な気候や生命活動の弱さなど、高山特有の厳しい環境圧により、数万年の時間をかけて30センチに満たないところもあるほどに、雲ノ平における「表土」は大切な存在です。脆弱な場所に登山者の踏み跡が生じ、植生が失われると、雨による流水や雪解け、霜、乾燥、またさらなる登山者の踏圧が加わるなどの要因によって、貴重な表土の流失が引き起こされるとともに、浸食・裸地化が進行。一部では池塘がまるごと消失してしまうなど、周辺の生態系や景観の不可逆的な破壊につながることも稀ではありません。
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旧来の登山道整備の問題点
現行の国立公園における登山道の維持管理体制では、責任や権限の所在が明確でなく、また管理のあり方に関する評価基準も確立されていません。山小屋や山岳会など、個人の手による整備作業には限界があり、自然環境に精通したエキスパートの不在が埋めがたい空白となっています。また従来の施工では、景観美や生態系を損なうばかりか、登山者の危険につながる結果を生んでしまっていることも少なくありません。まずは足元にある登山道の施工や発想のどこに問題があるかを認識し、共有していかなければなりません。
持続可能かつ自律的な
登山道整備活動に向けて
登山道整備をめぐる様々な問題と向き合い、解決を目指すためには、長期に渡る粘り強い活動と、それを支えるための堅固な基盤が不可欠です。
雲ノ平トレイルクラブは、専門家や行政、山小屋、大学、ボランティアスタッフ、企業などが手を組み、従来の垣根を超えた包括的な協働体制を構築。
生態系や景観美に調和した技術や発想、質の高い環境保全のあり方などを現場レベルから提案し、今後の国立公園管理体制のひとつのロールモデルとなるべく活動を行います。