登山道の維持管理をめぐる、現状の危機的な状況を打開するために、2021年夏に雲ノ平山荘と東京のアウトドアショップ「ハイカーズデポ」が協力して立ち上げたのが「雲ノ平登山道整備ボランティア・プログラム」です。
この活動は、これまでのように現場に近い山岳関係者だけではなく、広く民間のアウトドアコミュニティー間、各種専門家などの連携を強め、行政ともこれまで以上に建設的に協働関係を築くことを視野に入れ、ボトムアップ的に問題を解決していくことを企図したものです。活動内容としては、登山道整備の実践を重ねる中で、生態系や景観を扱うための技術や感性を磨き、同時に座学で社会構造としての課題を包括的に学び、メンバーが長期的に関わり合う中で、持続的に機能するシステムを構築していくことを目指します。初年度から、参加者募集の呼びかけに対し、大工や建築士、アウトドア関連企業スタッフ、ビジネスマン、国立公園研究者など、さまざまなキャリアを持ったメンバーが集まり、活気のある活動が展開されました。
また、初年度は雲ノ平山荘と親交のある「近自然工法」の第一人者、大雪山山守隊の岡崎哲三さんを講師に招き、近自然工法の講習や異なる地域間の情報交換なども行われました。
過酷に見える登山道整備作業も、理念を共有する仲間が集って、生活をともにしながら活動することで、喜びに満ち、学びの多い時間となります。濃厚な日々はあっという間に過ぎていきました。